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アポロ13

公開年 監督 主演
1995 ロン・ハワード トム・ハンクス

 アポロ計画・・・アメリカの宇宙開発に燦然と輝く金字塔。1号の打ち上げ失敗に始まり、11号による月面着陸、13号の奇跡の生還。冷戦の中、宇宙開発が華やかなりし頃に繰り広げられたこの計画は、今となっては夢のような話だ。
 実際、最後の月面着陸が行われてから現在にいたるまで、実に四半世紀、人類は地球の勢力外へ脱出することなしに、地味な宇宙開発が続けられている。まぁ、馬鹿みたいに金をかけてやることじゃないってのは分かるんだけど。でも、どうにも夢のない話なんだよね。宇宙から地球を見てみたい。地球ではない異世界の大地に足を踏み入れてみたい、そんな想いが夢から現実になった頃のお伽話。今から振り返るとアポロ計画っていうのはそういうものかも知れない。

 で、13号について描かれた本作。
 一言で言ってしまえば、ノンフィクションだけが持ち得る迫力。それをまざまざと見せ付けられた思いがする。
もちろん、映画である以上、ある程度の演出はあるのだろうが、それにしてもこの作品が持つ圧倒的な迫力が色あせる事はない。
 ストーリー展開の構成そのものは、かなり単調。宇宙船内、管制センター、そして主人公の家族。その3点をぐるぐる回るだけであり、派手なアクションシーンなど、もちろんない。発生するトラブルも、数えてみれば、2、3個しかないのだ(まぁ、その2,3個が一々致命的なものだったんだけど)。しかし、それでいながら、2時間半という上映時間をだれることなく描ききっている。構成、演出が非常にバランスよく作られている故なのだろう。

 実際のところ、はるか宇宙空間で絶望的なトラブルに陥った時のクルーの気持ちなんて想像すらできない。地球がはるか向こうにあって、自分達の周囲何万キロにはどんな生物もいない。そんな状況に普通の人が置かれてしまったら、それこそ発狂するんじゃないだろうか?
 しかし、宇宙飛行士という職業に就く人たちは、そういう苦境を乗り越える精神力を持ってるがために、この任務につくことができたんだろうな。
 そして地上のスタッフ達。自分達の遠く手の及ばない状況の中で最善の解決策を求める姿は緊迫感に満ち、胸を打たれるものがあった。特に、医師の診断によって、出発直前に任務から外されたパイロット・ケンによる大気圏再突入のシミュレーション。これは本当にそうだったのか?と思うほどの偶然の配役。もし彼が地上に残っていなかったら?映画になるほど美しい結末に導くことができたのだろうか?
 まぁ、こういう話に「たら、れば」はないのだろうけど。
 そういえば、この物語には、悪役というものが存在しない。すべての人たちが、最善を求めて努力してる。これが作り話であったら、話を盛り上げるために誰かしら悪役を登場させたはず。しかし、逆にそういう人物が登場していないことで、変に場がしらけることなく、最後まで途切れることのない緊張感が持続していある。そして見終わった後も、すっきりした気持ちでこの作品を振り返ることができた。これが「ノンフィクションの迫力」なのだろう。

 なんか、意外とうまく言葉に出来ないものだな。完全に映画の世界に入り込んでしまったものだから、このシーンがどうこう、って客観的に見ることを忘れてたんだな、きっと。自分もこの事件に立ち会った人間の一人である、そう錯覚させる演出の妙があったんだろう。
 SF(になるんだろうな、区分けとしては)では屈指の名作といえるのではないだろうか。